まちの新陳代謝にこだわりたい
流山くらし不動産の代表・石射さんへのインタビューも最終回です。
今回は、石射さんが流山エリアの専門家を募って取り組んでいる「流山・空家を生まないプロジェクト」について聞いています。
この取り組みは日経新聞やアエラなどでも取り上げられていますが、なぜこのプロジェクトが必要なのかを聞く中で、石射さんの「まちの新陳代謝」によって賑わいや人と人との繋がりを継続させていきたいという思いが見えてきます。
この取り組みについては、空き家の所有者はもちろん、空き家の増加でお困りの自治会の方々にも、ぜひ注目していただきたいということです。
行政組織とは異なる、新しい取り組みである「流山・空家を生まないプロジェクト」について、ぜひご覧ください。
「流山・空き家を生まないプロジェクト」のきっかけ
—さてインタビューも最終回ですが、石射さんが流山で推進している「流山・空き家を生まないプロジェクト」の活動について教えてください
社会問題になっている空き家対策については、買い取りだとか空き家バンクだとか、世の中にたくさんあるんですが、ちょっとピンとこない部分がありまして、というのもそれらが本当に役に立つのかなと思ったんです。
—どういうことですか
「空き家」になっているということは、流通できる状態ではないということなんです。「空き家」を買い取りますというサービスがあったとしても、それは「空き家」や「古家付き土地」として流通可能な状態のものが対象でしょう。でもまちを歩くと明らかに人が住んでない家が多くありますが、その大半はいろいろな課題を抱えて簡単には売却や解体ができない状態なんです。
—法律というか、定義の上ではまだ「空き家」になる以前の状況なんですね
それでこうした放置された家々に対して何かできないかと考えていた時に、「岡山・空き家を生まないプロジェクト」の書籍に出会いまして、そのコンセプトを流山でも広めてみたいと思ったんです。
注）「岡山・空き家を生まないプロジェクト」は、建物の所有者やその関係者の方々を対象に、空き家を生まないための様々な取組みを行う、2020年度発足の産官学協働プロジェクト
—それから石射さんが様々な専門家に声を掛けてメンバーを募ったんですね
そうです。これは放置された家や、空き家予備軍に対しての解決策を提示するための専門知識を持ったメンバーです。
—実にバラエティーに富んだ専門家ですね
流山市の司法書士さんや税理士さん、弁護士さん、リフォーム会社さん、お片付け屋さん、それから終活のアドバイザーやファイナンシャルプランナーもいらっしゃいます。
「流山・空き家を生まないプロジェクト」の運営メンバーはこちらからご覧になれます
—お片付け屋さんや終活アドバイザーまで
私たちのプロジェクトにご相談いただいたら、問題点を整理して必要な対応策を明らかにします。そして該当する専門家がチームを構成して、空き家問題の解決を実行します。これはかなり画期的だと思います。
—といいますと
行政組織ではなく、民間で専門家同士が緩やかな繋がりを持って、同じゴールを目指して取り組む団体というのはどんな課題においてもなかなか存在しないと思います。
人口急増の流山でも｢空き家｣問題 予防へ地元住民が決起
2021年まで人口増加率が全国の市で6年連続のトップだった千葉県流山市でも、空き家問題の波がじりじりと押し寄せている。開発がめざましくファミリーの移住が進む『流山おおたかの森』エリアと対照的に、昭和に発展した街区では住民の高齢化が進み「空き家予備軍」が多い。問題が深刻化する前に「予防」しようと地元民が決起した。
引用元 日本経済新聞：2024年8月20日付の記事
空き家以前の”中間領域”という存在
—具体的にはどんな課題が多いですか
よくあるのは空き家が存在しているんだけど、所有権が自分だけじゃないので何か工夫しないと売却できないというケースですね。
—それはそうとうありそうですね
あとは自治会の方とか、近隣の方が増え続ける空き家で困っているというケース。それから、 今は親兄弟が一人で住んでいるけど近い将来に自分が一部相続するから、事前の交通整理をしておかないといけないケース。そういう感じですね。
—自治会としての悩みも、相続的な悩みも普遍的ですね
こういうケースはまだ完全に空き家にはなっていない“中間領域”なんですよね。これらに対して、行政はまだ動けないことが多いと思うんです。その家が管理不全や迷惑案件になったら対処療法的に措置ができるんですが、“中間領域”では「この空き家はいずれ迷惑になるから、売却を検討しなさい」なんて行政は踏み込めない。そういうことをやる動機は行政にはないわけです。
—行政にはできない部分を担うんですね
市の方とも話してみたんですが、放置されている家が迷惑だと訴えてきたら所有者さんに連絡したりはするけど、所有者さんに具体的に売却を検討するように勧めるなど踏み込んだ提案はできないそうです。
一方で、普通の不動産会社の方に目をやると、空き家を持っている人が相談に来るんだけど、相続など法律的なことが複数絡み合っていて簡単には紐解けなくなってしまっていることが多々あるんです。
このように“中間領域”で存在している家屋がかなり存在していることが分かってきました。そういうものは時間が経てば経つほど、家屋が崩れていって厄介な存在になるんです。
—そこまでいくと手遅れというか、価値もなくなってしまいますね
さらに、それはいずれ行政業務を圧迫していくものになっていくんです。近隣の人たちも空き家問題が深刻になると危惧していても、具体的な解決手段があるわけではないので動くことができないんです。
「流山・空家を生まないプロジェクト」は、流山市の市民団体｢流山市民活動推進センター｣として登録して活動している
行政組織ではないからできること
—そこで「流山・空家を生まないプロジェクト」が動くんですね
たとえば、所有権がわからない場合でも裁判所に申し立てて、「管理人」を裁判所に選任してもらって、その人が空き家の売却交渉するなんていう手段があるんです。
—そういうことはまさに専門家の知識と経験が必要ですね
行政の方が強権的に解決に乗り出すのはよっぽどの状況になってから。我々のプロジェクトの役割としては、そこまでの物件ではないけれど“中間領域”で留まっている空き家をもしくは空き家予備軍を解決するというものです。
—全国的に必要な取り組みという気がします
行政の方ともこの取り組みについて理解を深めて、負担費用などのことも検討しながら連携を強化していけたらいいと考えています。そうすれば日本各地で実施できる解決モデルになると思います。
—もはやすべての自治体で空き家は大きな問題になっていますからね
このプロジェクトのモデルが全国に波及していけば、まちが元気になるというか、活性化につながると思います。例えば地域に住んでいた息子さんが就職や結婚で地元を出てしまったけど、親御さんは依然として住んでいて隣や近くで空き地や空き家が出たっていう時に、近くに住めるところがあるから帰って来ようというようなことも考えられます。
総住宅数のうち、空き家は900万戸と、2018年（849万戸）と比べ、51万戸の増加で過去最多とな
っており、総住宅数に占める空き家の割合（空き家率）は13.8％と、2018年（13.6％）から0.2ポイ
ント上昇し、過去最高となっている。空き家数の推移をみると、これまで一貫して増加が続いてお
り、1993年から2023年までの30年間で約２倍となっている。
引用元 令和５年住宅・土地統計調査
—空き家として放置されるよりよほどいいですね
親御さんの近くに住むのは、便利でもあるので子ども世代も帰ってこようと思うかもしれません。同居は抵抗があったとしても、住んでいたまちに戻りたいとか、親が近くにいるのはいいなとか。そうやって人が戻ってくると、今以上にお店やサービスが必要になり、まちがまた賑わっていくというのがあると思うんです。
—U ターンによる効果ですね
こういうまちの新陳代謝が進むことはとても重要です。私は、「住んでる方がどんな状況だったら一番心地よくて、そしてそれがなぜ今できてないのか」を常に考えてます。阻害要因を取り除いて、一番心地いい状態に持っていくことにお役に立ちたいです。それは創業の想いとも共通しています。まちづくりや地域の活性化は、人と人の繋がりを生み出していきます。そのためにも空き家問題には、流山くらし不動産としても、「流山・空家を生まないプロジェクト」としても、積極的に取り組んでいきたいと思っています。
—多岐にわたるお話ありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。家探しでも、空き家対策でも、お客様のご要望をよく伺って、幅広いご提案をさせていただけたらと思っています。「理想の暮らし」をかなえるために、まずはお気軽にご連絡ください。
全3回にわたるインタビューを読んでいただき、ありがとうございました！
「流山から発信して、人々が笑顔で、ワクワクするまちを全国各地に増やしていきたい」
空き家対策や、古民家再生による地域活性化といった株式会社Myla（マイラ）の事業は、そうした未来を実現するためのものだということがわかりました。
石射さん曰く、日々の活動としては、誰もが「理想の暮らし」にたどり着けるように、良いことも悪いこともリアルな情報を提供して、お客様に寄り添っていきたいそうです。不動産取り引きはお客様にとって大きな決断ですから、耳あたりのいい言葉だけを並べるようなことでは良い結果は出ないのでしょう。
全3回のインタビューへのお付き合いありがとうございました。未来を創り出す「流山くらし不動産」ならびに株式会社Myla（マイラ）をこれからもよろしくお願いいたします。
